木材活用コンクールの狙いは、誰もが参考にできる「木の良さを活かした作品」を選び出すことにあります。したがって審査では、選びだされた作品が手本となり、木材の新しい用途の普及と木材利用の拡大に貢献するという効果・効用を重視しています。また、本年は「豊かさにつながる木材利用」という新たな視点を取り入れて審査を行いました。
今回は、最優秀賞が農林水産大臣賞となったこともあり、全体で232作品という多数の応募がありました。各部門ともバランス良く作品が寄せられたことも本年の特徴といえるでしょう。
第1部門には、優れた作品が数多く寄せられ、選にもれたものでも10年前であれば選ばれたに違いないという建築作品が多数ありました。大規模な一般建築への木材使用がかなり浸透してきたといえます。
それに対し第2部門は、都市部における建築物への木材利用を考えた時に、更なる活用が期待される領域であり、今後、さらに良い活用の事例が出てきてほしい部門です。
第3部門は、住宅という、私達の暮らしにかかわる身近な領域であり、最も多くの作品の応募がありました。しかし、第1部門に比べると、近年の変化・発展があまり感じられませんでした。もっと斬新な木材の使われ方がされた、意欲的な作品の応募を期待したいところです。
第4部門は、多様な作品が寄せられましたが、多くの人が訪れる公開された場において、見たり触れたりすることで、木の良さを体験できるかどうかを重視して選考しました。
木製品を対象とした第5部門は新設された部門ですが、多くの応募がありました。優れた工芸品的な作品の応募もありましたが、木材の活用というコンクールの趣旨から、木材の新しい活用の仕組みやアイデアが十分に示されているかどうかを重視して審査を行いました。
多数の作品に応募いただいたため、審査は例年以上に長時間にわたりましたが、厳正なる審査な結果、22作品を入賞作品として選びました。木の良さを活かした作品を幅広く選考することが出来たと考えております。また、震災復興に関連した作品に「震災復興特別賞」を、継続的なプロジェクトして評価できる作品に「木育活動特別賞」を贈ることとしました。
農林水産大臣賞
津別町多目的活動センター さんさん館
株式会社アトリエアク
構造材、羽柄材、内外装材、建具材、家具類、サインに至るまで、地元産材及び地元工場製品である針葉樹合板を使用し、家具類の製作もすべて地元の加工場で行われており、材料、加工、建設にいたるまでの明確な流れが読み取れる建築である。木材を活用した建築として、今までになかった完成度を持つ作品といえよう。また、地域のつながりやまちづくりの想いが感じ取れるという意味でも評価された。
林野庁長官賞
東部地域振興ふれあい拠点施設
安田 俊也、原田 聡、大塚 直、塩手 博道、丸谷 周平、落合 徹、
北田 祐一、石神 哲史、松村 佳明、根岸 雄児、岩﨑 正泰
(株式会社山下設計)
大規模な木造の柱梁に鉛直力のみを負担させ、鋼製フレームにLVLを入れた耐震パネルを外周部と吹き抜け部分に市松状に配置させることによって、水平力に抵抗させている。鉛直荷重を負担しない耐震パネルは、耐火被覆が不要となり、木材を活かした建築となっている。室内から見え、直接触れられることで木材の温かみが感じられ、また、外観の特徴にもなっている。都市部の公共建築として、大規模木造のひとつの形を示したことが評価できる。
第3部門賞(一般住宅)
堀切の二世帯住宅
山田 卓矢+石田 潤(リンク建築設計工房)
中田 琢史(リズムデザイン)
上下に重なる階段を各階に2つ設けることで、完全分離された2世帯住宅をシンプルに実現している。階段の両側の柱を24mm厚の構造用合板で挟み込むことで構造体として利用しており、またそれが、インテリアの特徴的なアクセントになっている。
第5部門賞(プロダクツ・木製品)
THE BENCH
関光 信也 (関光デザイン事務所)
やわらかな針葉樹の木肌を生かしたシンプルで素直な造形。公共用の家具としての強度、機能も充分であろう。写真の姿からだが、触れてみたくなるような風合いの仕上げの試みも評価したい。多くの人が集い、行き来する場所に、ごく当たり前に“木”の家具がもっとあっていいと感じる。
震災復興特別賞
合掌の家
上野 英二
(オークヴィレッジ木造建築研究所)
木育活動特別賞
赤ちゃん木育ひろば
株式会社内田洋行
テクニカルデザインセンター
木材活用特別賞
棲 Sumika
市橋 正崇
日本大学芸術学部
デザイン学科建築デザインコース
木材活用特別賞
Soup Stock Tokyo ルクア大阪店
松本 照久、鈴木 修、平野 大
株式会社リックデザイン
木材活用特別賞
「自然共生の心と技」で建てる
1%の家づくり
後藤 道雄
社会的企業じねん(自然)組一級建築士事務所
木材活用特別賞
如雨露~季節を感じる住宅~
鈴木 祥司
アトリエ祥建築設計
木材活用特別賞
RCSW
六車 誠二
六車誠二建築設計事務所
木材活用特別賞
西之谷の住宅|kigi
原田 一朗
ハラダデザインアーキテクチュアスタジオ
木材活用特別賞
BIO MIMIC LOVE
武蔵野大学伊藤泰彦研究室+稲山 正弘
木材活用特別賞
中空パネル
川添 恵一郎
有限会社サンケイ
木材活用特別賞
木製デジタルサイネージジャケット
「Lxwall Jacket W-001」
南木 徹+亀山 勝義+朝日 孝+伊藤 清+福田 裕昭
マジケ合資会社+常盤産業株式会社